【犬の糖尿病】症状から原因・予防・治療法までご紹介

犬の病気

糖尿病とは

糖尿病は、膵臓すいぞうから分泌される”インスリン”というホルモンの働きが悪くなったり、作られないことでさまざまな症状が出る病気です。インスリンは血糖値を下げたり、血液中のブドウ糖(=グルコース)を細胞に取り込む役割を持っています。インスリンの量が少なすぎると高血糖、反対に量が多いと低血糖になります。糖尿病は合併症が付き物ですが、その中でも”糖尿病性ケトアシドーシス”が厄介な存在で、緊急性が高いため入院が必要です。犬の糖尿病は治ることはなく、生涯付き合っていかなければならないのでつらく感じるかもしれませんが、インスリンのコントロールがうまくいけば安定した生活を送ることもできます。

糖尿病という病名の由来は、高血糖時に腎臓の働きによって、血液中に増えすぎたブドウ糖が尿(尿に糖がたくさん混ざっている状態)として排出されることから付けられました。

糖尿病の症状

  • 皮膚が乾燥している
  • 感染症にかかりやすくなる
  • 疲れやすくなる

糖尿病で高血糖になると、外から入ってくる細菌やウィルスと闘う白血球や免疫に関する細胞の機能が低下して、皮膚が乾燥したり、風邪を引きやすくなってしまいます。

  • 眼球が白く濁ってきた(白内障)

白内障は目の中にある”水晶体”(カメラでいうレンズ)が濁ることで起こります。糖尿病になると血液中にブドウ糖が増えていき、水晶体にそのブドウ糖が蓄積されます。それにより水晶体の中の水分の圧力が変化して、結果として濁りが出てきます。

  • 多飲多尿

糖尿病での多飲多尿は脱水症状です。インスリンが十分に働かない、分泌不足でいると、高血糖(血液中のブドウ糖の濃度が高い状態)になります。ブドウ糖は体に必要な栄養なので、通常は尿には排出されず血液中に戻されますが、血液中のブドウ糖が増えすぎると(増えたブドウ糖を薄めるべく)腎臓がブドウ糖を多量の水分と一緒に尿をつくって排出します。そのため、尿量や回数が増えるということです。そして、尿量を増やすためには体内の水分を使います。体内の水分が使われすぎると脱水状態になってのどが渇くので、水分を多量に摂るようになります。

  • 食欲が急に増す食べているのに痩せてきた

インスリンが十分に働かなかったり分泌不足が続くと、体へ栄養が行き渡らず飢餓きがのような状態になり、それでも栄養を取り込もうとするため食欲が増します。それが続くと、体内に蓄えている脂肪やタンパク質などから栄養を摂ろうとするため、脂肪や筋肉量が減り、痩せていってしまうのです。

  • 下痢や嘔吐を繰り返し、脱水を起こしている(糖尿病性ケトアシドーシス)

食べているのに痩せてくるという症状で、”栄養を脂肪などから摂ろうとするから”と説明しましたが、脂肪が分解されると”ケトン体”という物質(脂肪を構成している脂肪酸から作られる)が血液中に増えます。体を巡っている血液は正常であれば弱アルカリ性ですが、ケトン体が増えて酸性に変わると、食欲不振、元気喪失、下痢、嘔吐を繰り返すようになります。続くと重度の脱水が起き、さらに進行すると昏睡状態へ。そして死に至ります。これが糖尿病性ケトアシドーシスです。

  • ぐったりしている(低血糖)

糖尿病の治療中で、飲み薬や注射で補ったインスリンの量が体にとって必要以上の量であった場合に低血糖になります。膵臓から出されるインスリンの量は、食事の間隔や食べる量、その日の運動量などによって変わるため、常に一定ではありません。飲み薬や注射では細かなインスリンの調節が難しく、効果が出すぎてしまうのです。糖尿病の治療中は、ふらつき、低体温、震え、痙攣などの症状に注意してください。こういった症状が見られたら、病院に連絡して獣医さんの判断を仰ぎましょう。

糖尿病の原因

人の糖尿病にはいくつか種類があって、その中の1型と2型が犬に当てはめられています。

1型糖尿病

インスリンを分泌する膵臓すいぞうの細胞が壊れてしまい、インスリンがほとんど作られません。なぜ細胞が壊れるのかは分かっていませんが、自己免疫(自分の細胞などを自分で破壊してしまうこと)が関わっていると考えられています。症状が進行するとインスリンが全く作られなくなります。犬はこの1型に近い糖尿病が多いと言われていて、インスリン注射が必要です。

2型糖尿病

日本人に多い糖尿病は2型糖尿病です。人では遺伝や加齢によるものから、食べ過ぎ、運動不足、肥満などが原因です。インスリンは膵臓すいぞうで作り出されますが、その量が少なかったり、体の中でうまく働くことができません。インスリンが全く出なくなるということはないのですが、状態次第ではインスリン注射を打つことがあります。

糖尿病の予防/治療

糖尿病の予防

遺伝によるところも大きいので一概には言えませんが、太らせないことが大切です。日頃からフードやおやつの量に気をつけ、適度な運動を心がけましょう。

糖尿病の治療

インスリン注射による血糖値のコントロール

人は食生活の見直しや運動、内服薬などで症状の改善が見られることがよくありますが、犬はインスリン注射で血糖値をコントロールする以外の治療法は今のところありません。

インスリン注射の注意事項

インスリン注射は飼い主さんが決めた時間に注射する必要があります。精神的、肉体的な体調の変化でフードをあまり食べないときがあるという子はよくいます。フードを食べなかったときにインスリンの量をいつもと同じだけ注射すると低血糖になるかもしれないので、食べない時は注射の量を減らすか打たないでおきます。これは事前に、必ず獣医さんに相談した上で行なってください。

食事療法

糖尿病専用フードは、糖の吸収を遅らせるような炭水化物や食物繊維が入っていて、血糖値の上昇を緩やかにします。糖尿病の患者さんに多い膀胱炎を防ぎ、結石をできにくくしたり、筋肉量を維持できるようなフードもあります。

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